MTC09 本義歯の完成時がスタート

お口と体の変化に合わせて義歯を調整していきます

入れ歯は完成したら終わりと思っていませんか?入れ歯は完成してからがスタートなのです。

新しい入れ歯をした当初はとても具合がよかったのに、時間が経つにつれて痛くなったり、思うように噛めなくなったという話をよく聞きます。これは口の中の状態が、変化したことが原因です。

口の中は、時間の経過と共に変化していきます。入れ歯は、あなたが歯科医院を訪れた時の口の中の状態に合わせて作っていますから口の中が変化すれば合わなくなるのは当然なのです。

上の図を見てください。「START」で入れ歯づくりを開始して、「初日」が本義歯が入った時です。ここで終わりだろうと来院をやめてしまうと、車がクラッシュするようにせっかく精密に型どりをし、精密に噛み合わせを計測したのにも関わらず、入れ歯がガタガタになってしまい、またスタートに戻ってしまいます。新しい入れ歯を入れた時点でスルメチェック®まで確認をとっていますので、かなりの硬いものまで食事できます。ただし出来たばかりで日本人の平均的な顎の角度で作成しており日常の食事は十分にできるものの、大きなものをほおばって噛んだりすると痛みがでてきたりします。これは口を大きく動かしたりしたときの角度がまだその人その人に応じた角度になっていないからで、数回の噛み合わせの調整(だいたい2か月くらい)をすることでなんでも噛め、自分の歯のように入れ歯を使えるようになります。これが上の図で「2か月後溝の完成」と書いてあるところです。

そして自分の歯のように噛めるようになると、今度は今まで使っていなかった噛むための筋肉や表情筋がだんだんと引き締まってきます。「8.噛むことで筋肉は引き締まる」の説明にもありますが、たるんだ頬の筋肉が引き締まると入れ歯と筋肉の間にスペースができ、食べかすがたまりやすくなります。大体入れ歯を入れてから3か月くらいでこの現象は起こります。その時に今度は頬の型どりをして入れ歯を修正します。当院ではこの処理をデンチャースペースと呼んでいますが学術用語的にはフレンジテクニックとかリモールディングとかピエゾグラフィというテクニックになります。

また本義歯を作成する前に抜歯をした人ですと、治療義歯の段階である程度歯茎の状態は落ち着いてはいるものの、本義歯を装着してから3か月という間に部分的に歯茎がどんどん育ってきたり反対にやせてきたりします。そういうときはリリーフやリベース、ハイドロという処置を行い、歯茎と入れ歯との接触を適正にする必要があります。

このように定期点検を繰り返すことで本義歯を入れてから3か月、6か月、1年後と快適に入れ歯を使うことができます。

しかし、その後も入れ歯を使っているうちに、その人その人の生活習慣が噛み合わせのズレを起こし、調整せずにそのままにしておくと身体のひずみとなって病気の原因を作ります。しかし、噛み合わせを今の身体に合わすように調整すると身体は元の良い状態に戻る現象を起こしますので、身体のひずみが取れます。このように身体と噛み合わせは一体なのです。

入れ歯自体も人工の歯は時間が経つにつれ擦り減り、はじめは山と谷があったものが平らになったりします。こうなると入れ歯はますます合わなくなり変形したり、破折したりします。車でいうとタイヤがすり減った状態でそのまま走り続けていると本体の部分までだめになってくるのと同じです。

こうした状態を避けるために最低でも必ず3か月に一度は定期健診・調整を受けてもらうようにしております。噛み合わせが変わり咬合調整だけでは対応できなくなったらまた噛み合わせの記録をとって人工の歯だけを交換すればいい。人工の歯がすり減ってかめなくなっても人工の歯だけを交換してまた噛めるようにすればいい。(人工歯交換の目安は上の図にもありますが本義歯装着後3年です。ただし個人差があります。)入れ歯のフレームが合わなくなったらフレームの部分だけ交換すればよいのです。合わなくなったら入れ歯を一からつくりかえるのではなくこのようにパーツを交換することで一つの入れ歯をずっと使い続けていってほしいと考えております。そのためには定期健診で入れ歯の状態がどうなっているかを確認し、そのときの口の状態にぴったりの入れ歯に調整することが大切です。

入れ歯は完成したら終わりではありません。むしろ完成してからがスタートなのです。