入れ歯は生きています。
正確にいえば、使う人によって生きた入れ歯にもなれば、死んだ入れ歯にもなります。一つの入れ歯ができ上がったから、それで終わりというわけではありません。むしろでき上がったときから、その入れ歯は命を吹き込まれるといってもいいでしよう。
入れ歯を使い続けていくと、だんだん合わなくなってきます。歯ぐきが衰えたり粘膜が減ったりして、使う人のからだが変化すると同時に、入れ歯自体も磨耗するからです。人間のからだも入れ歯も変化し続けているのですから、少しずつズレが出てくるのは自然のことです。
しかし、合わなくなったから新しいものをつくるのではなく、そのつど入れ歯を修理し、調整して、使ってほしいのです。自分に合う入れ歯に調整しながら使い続けて初めて、入れ歯は生きてきます。
自分のからだと一体になるのです。
なぜ私がこんなことをいうのかというと、一つひとつの入れ歯を真剣勝負でつくっているからです。同じ入れ歯は、二つとありません。
そして入れ歯の一本一本はすべて体から計測された歯で、あるべき位置と大きさが決まっています。それを割り出すのは大変な作業です。
とくに最近はむずかしい入れ歯づくりが増えて、一つつくり終えると精も根も尽き果ててしまいます。
まさに私にとって入れ歯づくりは、身を削るようなものなのです。
こうしてつくった入れ歯を、縁があって私のところに来られた方々に使っていただいています。私はこの縁を大切にし、最後まで自分がつくった入れ歯の面倒をみたいと思っています。
私が健康で生かされている限り、そして入れ歯をつくる環境に置かれている限り、入れ歯は補修され、生き続けていくのです。
全身を考えた歯科治療をいたします。
当院の最大の特徴は「技工士との密接な作業のもと全身を考えた咬合再構成ができる」この一言に尽きます。
勿論全ての不定愁訴や病気が咬合からきていると言い切ることはできませんが、わずか一本の歯の噛み合わせのよくない詰め物・被せ物が、ブリッジが、インプラントが、入れ歯の人工歯が咬合を狂わし、虫歯や歯周病も相まって、ひいては全身を狂わせる事実を目の当たりにすると、歯科医師としての責任と医療の本質について考えざるをえません。
歯科医師として私が関わった患者さんは生涯そのお身体の変化を気にかけ口腔内を診ていく責任があると考えております。なぜなら口腔は全身に影響を及ぼし、逆に全身は口腔に影響を及ぼすからです。
医療の本質とは「仁」すなわち他者を思いやる心であると思います。それは経営を考え、時間に追われ治療投薬することではありません。ましてや患者さんに迎合しサービス業に終始することではないと思います。。
一人一人皆違う状態であるのに対し、なにがベストかを考え本当に患者さんのためになることを自由な発想で提案し、インフォームドコンセントを行い、誠実に徹底して施術させていただく、それができる環境が当院にはあります。
一本の歯が全身に影響を及ぼすわけですから一人一人の患者さんに対して全身を触る手術をしているような気持ちで常に真剣勝負で取り組んでおります。ですから事前にシュミレーションを行いじっくり時間をかけて間違いのないように施術させていただいております。
歯の一本一本には身体から計測されたあるべき形・大きさ・方向がありそれを実現していくのは本当に大変な作業です。歯科医院に「一回の治療は速く、安く、片手間に」を求めている方にはなかなか理解できないかもしれませんが、全身を考えて咬合を再構成するにはお口の中全体を一気に触らなければいけないことも多く、待ち時間含め丸一日その人にかかりっきりで治療と技工に費やすことも当院では稀ではありません。
結果非常にスピーディーに最終形まで到達し治りも早いのです。その治療、技工作業の先に患者さんから「噛める、最近身体がよくなってきた」そういう声を聞きたくて私を含め当院のスタッフは働いています。
1人でも多くの人とご縁が持てることを期待しています。