目次

「安定剤をつけないと、食事中に入れ歯が動く」
「以前より使う量が増えてきた」
「毎日使ってよいのか、体への影響が心配」
みやの歯科医院では、入れ歯安定剤の使用をおすすめしていません。安定剤を入れる量や場所、厚みは毎回同じにはならず、入れ歯が収まる位置や噛み合わせがそのたびに微妙に変化するためです。
安定剤を使うと一時的に外れにくく感じることがあります。しかし、入れ歯が外れる原因を診断したり、噛み合わせのバランスを直したりするものではありません。初めは1日1回だった使用が2回、3回と増えているなら、安定剤を足すのではなく、なぜ入れ歯が動くのかを診査する必要があります。
みやの歯科医院が入れ歯安定剤をおすすめしない理由
安定剤を毎回同じ量、同じ場所、同じ厚みで入れることは困難です。そのため、入れ歯の位置関係が使用のたびに変わり、人工歯が接触する順序や、粘膜に加わる力の方向も安定しません。
この状態で噛み続けると、粘膜の一部に揺さぶるような力や偏った圧力が繰り返し加わる可能性があります。安定剤で動きを覆い隠すのではなく、入れ歯を外そうとする力がどこから生じているのかを確認することが重要です。
安定剤の使用回数が増えていく悪循環
初めは1日1回の使用で済んでいても、入れ歯の位置が一定しないまま使い続けると、次第に外れやすさを感じ、2回、3回と安定剤を追加することがあります。使用量や回数が増えても、原因となる噛み合わせのアンバランスは残ったままです。
安定剤を追加するたびに入れ歯の位置が変わり、その位置に合わせて噛むことで、さらに粘膜へ不均等な力が加わるという悪循環に陥ることがあります。
フラビーガムになると新しい入れ歯の型取りも難しくなります
不安定な入れ歯による慢性的な刺激が続くと、歯ぐきが柔らかく動く「フラビーガム」と呼ばれる状態になることがあります。器具で触れるとプニョプニョ、プルプルと動き、圧を加えると大きく形が変わる粘膜です。
そのため、新しい入れ歯を製作するときに、粘膜の本来の状態を正確に記録することが難しくなります。柔らかい粘膜が押された状態で型取りされると、その型を基に製作しても、口の中で粘膜が戻ったときに入れ歯が合いにくくなる可能性があります。
フラビーガムがある場合は、できるだけ圧をかけずに型取りする工夫が必要です。当院では、必要に応じてフラビーガムに当たる部分のトレーに穴を開け、印象材の流れ方を調整して、柔らかい粘膜を押しつぶさないように記録します。
安定剤なしでは外れる5つの理由
1 入れ歯と粘膜の間に隙間がある
歯ぐきの下にある顎の骨や粘膜の形は、年月とともに変化します。入れ歯を作った当初は合っていても、次第に隙間が生じ、空気が入りやすくなったり、噛む力を受ける面積が不足したりすることがあります。
内面に材料を足す処置が必要な場合もありますが、隙間だけを埋めれば安定するとは限りません。粘膜の状態と噛み合わせを併せて診査します。
2 噛み合わせによって入れ歯が傾く
入れ歯は、粘膜に合っているだけでは安定しません。左右の一部だけが先に当たったり、顎を前後左右へ動かしたときに強く当たる場所があったりすると、そこが支点となって反対側が浮くことがあります。
この場合、安定剤で押さえても、入れ歯を傾ける力そのものは残ります。食事中だけ外れる、片側で噛むと浮く、前歯で噛み切ると後ろが持ち上がるといった症状は、噛み合わせの診査が必要なサインです。
3 入れ歯の縁や歯の位置が筋肉の動きに合っていない
会話や食事では、舌、頬、唇が絶えず動きます。入れ歯の縁が長すぎたり厚すぎたりすると筋肉に押され、短すぎると安定に必要な範囲を十分に覆えないことがあります。人工歯の位置が舌や頬の動く場所に入り込んでいる場合も、入れ歯が外れる方向へ力がかかります。
4 粘膜に痛みや腫れがある
強く当たる部分があると、痛みを避けるために無意識に噛み方が変わり、入れ歯がさらに動くことがあります。安定剤を厚くして痛みを和らげようとすると、原因となる当たりや噛み合わせが見えにくくなることもあります。
赤み、腫れ、出血、繰り返す傷がある場合は、使用を続ける前に歯科医院で確認を受けてください。
5 部分入れ歯を支える歯や装置が変化している
部分入れ歯では、残っている歯、被せ物、バネやフレームも安定に関係します。支えとなる歯が動いている、バネが緩んでいる、入れ歯や人工歯が摩耗・破損しているといった変化は、安定剤だけでは解決できません。

外れる原因の多くは噛み合わせのバランスにあります
入れ歯が外れる原因の多くは、粘膜面の適合だけでなく、噛み合わせのバランスにあります。左右や前後の一部だけが先に当たると、そこが支点となり、反対側が浮き上がります。顎を動かしたときの強い接触も、入れ歯を押し外す力になります。
図の1のように、上下の咬合面が噛み合っていない段階では、入れ歯の粘膜面自体は歯ぐきに適合していることがあります。しかし、噛み合わせの位置関係や左右のバランスが悪いと、図の2のように上下の咬合面が微妙に合わず、一部の斜面や高い部分から先に接触します。そこからさらに噛み込むと、入れ歯は接触面に沿ってずれます。その結果、図の3のように、それまで適合していた粘膜面に隙間が生じ、入れ歯が動く、外れる、痛みが出るといった症状につながります。
そのため、入れ歯の内面に材料を足す処置だけでは、外れる原因を解決できない場合があります。人工歯の位置、噛み合わせの高さ、左右の接触、顎を前後左右へ動かしたときの接触関係を確認し、噛む力が入れ歯を外す方向へ働かないように整えることが重要です。
噛み合わせのバランスを整えることで、粘膜面に材料を足さなくても、食べる、話す、口を動かすといった日常動作の中で安定する入れ歯を目指せます。ただし、粘膜や顎堤の状態によっては、内面の調整や新しい入れ歯の製作が必要になる場合もあります。
歯科医院へ相談したいサイン
- 以前より安定剤の量や回数が増えた
- 安定剤を使っても食事中や会話中に外れる
- 噛むとカタつく、片側が浮く
- 入れ歯を外すと粘膜に赤み、傷、出血がある
- 口臭、味の違和感、清掃しにくさが気になる
- 急に合わなくなった、入れ歯にひびや破損がある
- 部分入れ歯を支える歯が痛い、動く
急な腫れ、強い痛み、出血、飲み込みにくさがある場合は、早めに歯科医療機関へ相談してください。
ご自身で削ったり曲げたりしないでください
入れ歯の内面を削る、バネを曲げる、家庭用接着剤で修理するなどの自己調整は避けてください。適合や噛み合わせが変わり、修理が難しくなることがあります。
受診時は、現在使用している入れ歯、以前の入れ歯、使用中の安定剤をお持ちください。どの商品を、どのくらい、1日に何回使っているかが分かると、悪循環の程度を確認する参考になります。
みやの歯科医院では動く原因を分けて調べます
みやの歯科医院は、入れ歯を専門とする自由診療・完全予約制の歯科医院です。歯科医師と歯科技工士の両方の資格を持つ担当者が診察し、院内技工の環境で、診た本人が設計・製作・調整に関わります。
初めに、入れ歯を手で正しい位置へ押さえたときに安定するかを確認します。手で押さえれば安定するのか、それでも傾いたり浮いたりするのかによって、考えられる原因が変わるためです。
次に、フィットチェッカーという材料を使い、入れ歯の内面と粘膜がどの程度適合しているかを確認します。フラビーガムがある場合には特徴的な現れ方があるため、粘膜の動きと併せて診査します。
さらに、噛み合わせ、顎の動き、人工歯の位置、義歯床の形、残っている歯などを確認します。歯と入れ歯だけを切り離さず、身体との関係も含めて考えるのが、当院の「歯身一体®」の考え方です。
新しい入れ歯を製作する場合は、完成の一歩手前でピーナッツチェック、完成時にスルメチェック®を行い、実際の食品を噛める状態かを確認します。噛みにくい場合は、診察と製作を担当した本人が原因を見直します。
診査の結果によっては、噛み合わせの調整、修理、内面の調整、作り直しなどの選択肢を検討します。当院では基本的に、安定剤が必要になっている入れ歯は、現在のお口に合わせて作り替えることを軸に考えます。
当院は院内に技工設備を備え、診察した本人が設計・製作・調整に関わります。調整、修理、裏打ち、フレームを含む作り直しまで、入れ歯の状態に応じて対応を検討できます。ただし、実際に可能な処置は、お口の状態、入れ歯の材料、内部構造、契約内容を確認したうえで判断します。
他院で作られた入れ歯について
他院で作られた入れ歯も、外れ方やこれまでの噛み方を確認する診断資料として拝見します。ただし、材料や内部構造、製作時の設計が分からないため、患者さんから強いご要望がある場合を除き、当院では他院の入れ歯を直接削ったり大きく改造したりすることを基本としていません。
当院は自由診療の契約に基づいて診査・治療を行います。必要に応じて、前の入れ歯から得られる情報を新しい入れ歯の製作に利用する「リノベーション義歯」という考え方もあります。
よくある質問
入れ歯安定剤は毎日使ってもよいですか
当院では、入れ歯安定剤を毎日使うことをおすすめしていません。毎回、入れ歯の位置や噛み合わせが微妙に変わり、粘膜へ偏った力が加わる可能性があるためです。安定剤が必要な状態は、入れ歯とお口を診査するサインと考えます。
多くつけるほど外れにくくなりますか
いいえ。安定剤の量が増えるほど入れ歯が本来の位置まで入りにくくなり、噛み合わせが変化する可能性があります。追加して使い続けるのではなく、外れる原因を歯科医院で確認してください。
安定剤をつけたまま寝てもよいですか
当院では安定剤の使用自体をおすすめしていません。安定剤をつけたまま就寝せず、入れ歯とお口に残った材料を清掃し、使用している入れ歯と安定剤を持参してご相談ください。
安定剤を飲み込んでも大丈夫ですか
使用中に少量が口の中へ出ることはありますが、製品の用法・用量を守ることが前提です。大量に使用した、体調に変化がある、成分が心配な場合は、製品を持参して医師・歯科医師またはメーカーへ相談してください。
クリーム型とクッション型はどちらがよいですか
当院では、クリーム型やクッション型など種類にかかわらず、入れ歯安定剤の使用をおすすめしていません。製品を選び直す前に、入れ歯が外れる方向と噛み合わせのバランスを確認することが重要です。
安定剤を使えば作り直さなくて済みますか
安定剤は、破損、隙間、噛み合わせ、残存歯の問題を治すものではありません。噛み合わせの調整で対応できるか、内面の処置、修理、作り直しが必要かは診査後に判断します。
安定剤を使い続けずに外れる理由を確認しませんか
安定剤の使用回数が1日1回から2回、3回と増えているなら、入れ歯が不安定になる悪循環に入っている可能性があります。柔らかく動く粘膜になる前に、入れ歯の位置と噛み合わせを確認することが大切です。
ご相談の際は、現在の入れ歯、以前の入れ歯、使用中の安定剤をお持ちください。みやの歯科医院では、どこに隙間があるかだけでなく、どのように噛んだときに入れ歯が動くのかを確認し、必要な選択肢をご説明します。LINE無料相談では、来院前に現在のお悩みをお伺いできます。
当院の入れ歯治療について
みやの歯科医院の入れ歯治療は自由診療です。治療内容、期間、回数、費用は、欠損歯数、お口の状態、入れ歯の設計、必要な処置によって異なります。診査後、治療を始める前に治療範囲と契約内容をご説明します。詳しくは治療費ページをご確認ください。
入れ歯の装着後には、痛みや違和感が生じ、調整が必要になる場合があります。残っている歯、粘膜、顎の骨、使用する材料や設計条件によっては、希望する治療を適用できない場合があります。長く使用するためには、定期的な診査と調整が必要です。
関連ページとして、「入れ歯が合わない方へ」「入れ歯治療・MTコネクター®」「リノベーション義歯」「治療費」「LINE無料相談」も併せてご覧ください。
- 監修医情報
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みやの歯科医院 院長
宮野 敬士 歯科医師