→ピーナッツチェック®とスルメチェック®
→MTC会員制度
→噛み合わせと身体は一体
治療義歯から本義歯へ
当院では、まず「治療義歯」というものを使い、そのあとに「本義歯」に移行していきます。この「治療義歯」というのは、本義歯を入れる前段階のお口の治療と調整をするための義歯です。これは薄さが約1.5ミリでできています。ちなみに保険診療の入れ歯だと2.5~3ミリあり、自費診療だと0.5~1ミリですから、保険よりは薄く、ほぼ自費に匹敵する薄さです。
できあがった治療義歯で行う内容は3つあります。一つ目は審美性の確保、二つ目は歯茎を硬いものでも噛める状態に固めること、三つ目は咬合からくる全身のひずみを治すことです。
原則治療義歯は1週間に1回調整し、今挙げた3つもポイントを診ていき、早い方で2週間、遅くとも3か月で本義歯へ移行します。
本義歯は薄さが0.35ミリという極薄のものになります。これは先ほど挙げた自費に比べても半分以下の薄さということになります。本義歯が入ったら、その場でスルメや茎わかめを食べて、たしかに噛めることを確認していただきます。
本義歯ができるまでの工程を紹介します。「入れたその場でスルメが噛める」という理想の入れ歯にたどり着くには何段階ものチェックが必要です。このチェックが一つでもいい加減だと、どこかで必ず不調がでてきます。そのために、歯科医師も技工士も、そして患者さんも、チェックの一つ一つに真剣に取り組んでいるのです。
まず、入れ歯を作るときは歯科医師が歯の型をとりますが、この型のことを歯科の世界では「印象採得」と言います。入れ歯を作るための第一歩ですから、これがちゃんと取れていないと後の技術がいくら優れていても、患者さんにぴったりあった入れ歯はできません。
なぜなら、この型とりが、いい入れ歯ができるかどうか、入れ歯の完成度の30%を占めているからです。細かい空気(気泡)やトレーにあたっているのは論外ですが入れ歯の製作に必要な部位が正確にとれるまで妥協せずに徹底的に行います。ですので患者さんには複数回型どりにご協力いただく場合がございます。通常ですと型どりして「はい次回また来てください」となりますが、当院では模型をすぐに作製しその模型が100%正しく患者さんのお口の中を再現しているか確認してはじめて印象採得が終了となります。
その確認のために「チェックタッチ®」と呼ばれる画期的な方法を当院ではとっています。独自の方法なので特許庁に申請し、株式会社大阪歯科センターの登録商標となっています。チェックタッチ®は入れ歯の印象が正確に再現されているかを確認するMTC義歯独自のシステムです。
模型では合っていたはずの入れ歯が、実際のお口にはぴたりと合わなくて作り直し…というトラブルを型どりの段階で事前に防ぐことができます。(チェックタッチ®は株式会社大阪歯科センターの登録商標です。)
「試適」とは、できあがった入れ歯が、ぴったり合い、きちんと噛めるかどうかを見るために、口の中に仮セットして試すことです。前段階でできた正しい歯型で設計し作成された金属の部分(メタルフレーム)が正しく患者さんの口に適合するかどうかをチェックします
人工歯を並べる位置を決めるために行う、「噛み合わせの記録」です。患者さんのお口に合う噛み合わせになるよう、前後・左右・上下・3次元的回転と精密に計測していきます。
よい入れ歯ができるかどうか、成功の50%は、この咬合採得で決まります。入れ歯づくりのまさに「要」となる、大切な工程になります。ですので咬合採得には患者さんの協力が必要となります。計測時、患者さんには正しい姿勢をとっていただきます。

背筋はまっすぐに背中を椅子のせもたれに寄りかからないで、ひざは直角にかかとは床に必ずつけ、顔は正面をむきます。この姿勢で噛み合わせを記録するのです。
例えば顔が上を向いていると下顎が奥にずれてしまう、顔が横を向いていると下顎が逆方向にずれてしまう、脚が伸びたり背もたれに背中が寄りかかっていると下顎が前へずれてしまい、正確な咬合が記録できないのです。正確な咬合が得られないと後のピーナッツチェック®が失敗し、また咬合採得の工程からやり直さなくてはなりません。咬合採得が正しければ、ろう義歯の段階でピーナッツがたやすく噛めます。ピーナッツチェック®が成功するか否か、その後の入れ歯製作が成功するか否かはすべてこの咬合採得にかかっています。

完成の1歩手前の入れ歯をろう義歯といいます。赤いろうそくの蝋の土台の上に人工歯がならんだ状態です。お口の中の温度は36~7度位でろうが軟らかくなります。その軟らかくなっている状態でピーナッツのような硬いものを噛むと通常ならば土台の部分が崩れてしまいます。
ところが、入れ歯が正しく口にフィットして正しいバランスで正しく噛み合っていればピーナッツが何の抵抗もなく「パリッ」と粉々に割れて土台の軟らかいろうが崩れないのです。これがピーナッツチェック®です。(ピーナッツチェック®は株式会社大阪歯科センターの登録商標です。)
これは「これ以上のものは入れ歯としてはできません。この入れ歯にはわずかの狂いもありません」という義歯の完成度テストになります。例えるならば、瓦を素手で割るのと同じ原理で、正確な力と方向性が実現したときだけ、瓦もピーナッツも砕けるのです。
当院で扱う入れ歯の秘密はまさにここにあります。要するに、ロウの部分は軟らかくゆるくなっていますが、歯の上下の噛み合わせの傾斜角度が、噛み合わせがしっかりできるような力学的構造になっているので、間に挟まれたピーナッツがずれることなく、動かない状態でパリッと噛み砕くことができるのです。これが「ピーナッツチェック®」です。
多くの方が誤解しているようですが、上下の歯は、まっすぐな上下運動だけをしてものを噛んでいるのではなく、回転運動をしています。その歯の凹凸がしっかりと組み合わされたときに、噛まれた食材をつぶしたり割ったりできるのです。こうした複雑な「噛む行為」を、入れ歯で完璧に再現するために、今述べたような一連の作業が必要不可欠なのです。

本義歯が完成すると、「さあ、スルメを食べてみて下さい。」と言います。
これが、スルメチェック®です!スルメを健康な天然歯と同様に噛めて味わいながら食べる事が出来ます。万が一噛めなかったら、正しい咬合ではないという証明と考えております。完成直後の入れ歯で「スルメを噛んで下さい!」と言われると、大抵の方が、驚きながらもおそるおそるスルメを噛み始めます。
すると、スルメを噛む音とよい香りがあたりに漂います。噛んでも平気だと分かると、自然と笑みがこぼれ、「噛めます!」の一言!こちらももうれしくなり、自然と顔がほころび目じりが下がります。
その後「茎わかめ」も食べてもらい、噛める事とコリコリとした食感を味わって頂きます。これこそが「入れたその場でスルメが噛める」MTコネクターの真骨頂の1つなのです。食べれる喜びが味わえる事こそが「生きた入れ歯」の証の1つではないでしょうか。
(スルメチェック®は株式会社大阪歯科センターの登録商標です。)

するめチェックが終了した新しい入れ歯は、もちろんすぐに食べられるようには作られていますが、この段階で患者さんの口にとっては100パーセント完全にぴったりするものではありません。なぜなら舌や頬の筋肉、顎運動などが、まだまだ新しい入れ歯に合った形状になっていないからです。そのため、はじめは、あわてて食べると舌や頬を噛んだりしますので、無理せずゆっくり噛むように伝えています。そしてこれらの改善には約2週間かかります。2週間すれば舌や頬の形状が落ち着いてきて、大きなものも大丈夫になり、会話や食事も楽になるのです。
また、新しい入れ歯を入れた当初は、一般的に3~7日以内の調整に何度か来ていただきます。新しい入れ歯を入れたときが、最も口の中が良い状態に変化していく大切な期間だからです。そして、少し落ち着くと、1週間~10日、2週間、3週間、1ヶ月に1回というスケジュールで調整に来ていただきます。
そして食事や会話も安定してきたら、その後は3か月に1度の定期検査に来てくださいとお伝えしています。
入れ歯の人工歯は時間の経過とともに摩耗します。しかしすり減ってしまったからといって、すぐさま新しいものをつくりなおす必要はありません。車でもタイヤがだんだんとすり減ってきたら、交換する前にローテーションします。それと同様に、人工歯も毎日使うものなので、日々すり減ってくるのは当然のことなのです。すると、噛み切りにくいタコや厚めの肉、磨り潰しにくい野菜など繊維質のものが食べにくくなります。
そこで入れ歯自体を作り替えるのではなく、擦り減った奥歯の人工歯だけ交換することにします。すると、元の磨り潰すことや噛み砕くことができるようになり、こうすることで入れ歯は生まれ変わるのです。
こうして私たちは一生懸命、患者さんの生体に優しく、身体の一部となるような入れ歯作りをめざしています。
ですから患者さんにも、ぜひこのことをご理解いただき、患者さん、歯科医師、歯科技工士の3者が一体になって「三人四脚」で入れ歯づくりからアフターケアまでお付き合いいただきたいのです。
当院が扱うMTコネクターはたしかに奇跡の入れ歯です。しかし、多くの奇跡がそうであるように、この奇跡も私たち歯科医師・歯科技工士はもちろん、患者さんの努力なしには現れてくれません。私たちはよく、入れ歯づくりを家をつくることに例えます。
家の基礎が弱くては家が建たないのと同様に、歯の基礎にあたる歯茎が弱くてはしっかりした入れ歯はできません。そこで基礎の歯茎を固め、土台、骨組みなどしっかりした家(入れ歯)をつくる準備を「治療義歯」の段階でします。その基礎や骨組みの上に、本格的に家(入れ歯)を建てていくのが「本義歯」です。こうして家ができていく過程で、あなたはすべてを人任せにするでしょうか。工事はちゃんと進んでいるか、自分の要望どおりになっているか、自分でも足しげく現場に通って確かめると思います。
家ができあがっても、住んでみて不具合はないか、新たに気づいたことはないか、そして、建築会社に連絡していろいろと相談するでしょう。入れ歯もこれと同じで、患者さんとしてもけっして人任せにせず、ご自分でもいい入れ歯ができるよう、私たちと一緒に頑張っていただきたいのです。
例えば、治療義歯のときの身体のひずみを治すリレーや、本義歯が入ったあとの点検・調整など、きちんと定期的に通っていただきたいのです。そして入れ歯づくりの途中でも、でき上がってからでも、どんなときも患者さんが感じていることは包み隠さず、すべて伝えていただきたいと思います。それが私たちには、その患者さんに合った入れ歯づくりの重要な情報になるからです。
わずかな違和感でもそのままにしないでください。
従来、ともするとこうした違和感を、「そのうち慣れるだろうから様子を見て」という先生方が少なくなかったようです。様子を見ているうちにますます違和感が増してくれば、すぐ対応せざるをえないからまだいいのですが、一番怖いのは本当に違和感がなくなってしまった場合です。この場合、合わない入れ歯に身体のほうが無理をして、合わせてしまっている可能性が強いのです。そうなると身体にひずみが生じ、それをそのままにすると、結局はもっとひどい状態になります。その入れ歯が決定的に合わなくなるだけでなく、健康上の重大な障害も出てくることになりかねません。
ですから入れ歯を生涯にわたって身体の一部として使い続けかつお身体も健康に保つために入れ歯のメインテナンスは非常に重要になってくるのです。 当研究会の安心プラン会員制度が生涯にわたる入れ歯のメインテナンスを可能にします。
実際に当院にて治療を行っている入れ歯の症例を紹介します。
注目していただきたいのがどの入れ歯も使用年数は最低でも数年、10年以上使っている入れ歯も下の症例には含まれているということです。入れ歯は1度つくったら、常に定期的にメインテナンスを繰り返すことでいつまでも新品同様に使っていくことができるということです。
入れ歯は何度でもよみがえります。合わなくなったら新しいものをすぐにつくるのではなくパーツを交換することでさらに自分に合った入れ歯にする(バージョンアップ)することができます。入れ歯には作り手の思いが込められています。また当然使用者の身体の一部ですから、使用者の思いものりうつっていることでしょう。どうか粗末にせずパーツを交換することで使い続けてほしいと思っております。
歯の面にある黒い色は1000分の8ミリの咬合紙でカチカチもぐもぐしてもらったときの印記です。
教科書上でしかないといわれる理想的なフルバランスドオクルージョンという咬合様式が実現されています。この患者様は割り箸でも噛めるとおっしゃっています。